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肩の力を抜いて楽しめる、自由でフラットな中華料理を届けたい | 中華可菜飯店 五十嵐可菜



2021年7月、東京・永福町にオープンした『中華可菜飯店(ちゅうかかなはんてん)』。
フードクリエーターの五十嵐可菜さんが届ける、健全でヘルシーな中華料理が魅力です。1人で料理の提供を行い、フードロスの観点から完全予約制。コースの内容は1-2カ月サイクルで変わり、旬の味を楽しむことができます。

今回は五十嵐可菜さんのもとを訪ね、お話を伺ってきました。
可菜さんが料理の道へと進むことになったきっかけ、お店立ち上げの経緯、自分が作る中華料理に込める思いなど、じっくりと聞かせてもらったお話を、盛りだくさんでお届けします。







“料理は、いちばん儚い芸術”

「大学生になるまで、ぜんぜん料理をしたことがありませんでした」

お話を聞きはじめてすぐ、返ってきたのは意外な言葉。

「昔は食べることに興味がなかったんですよね。でも、母は和食が得意で、家族の食事はいつもていねいに作ってくれていました。さらには実家が北海道の農家だったこともあって、おいしいものに囲まれる環境が当たり前。そのありがたみに気がついたのは、大学に入って一人暮らしを始めてからでした」

もともとはファッションの世界に興味を持ち、京都造形芸術大学に進学した可菜さん。
一人暮らしをするようになって、初めて料理の大切さを実感したといいます。

そして「料理をできるようになりたい」と思うようになったとき、ちょうど大学で“精進料理”の授業があることを知り、受講することになったそうです。


「調理実習みたいな授業なのかな、と思っていたら、ぜんぜん違って。座学が1時間と、その先生が作った料理を学生たちが食べる1時間……という、2時間続きの授業でした。座学では、作り方というよりも、食材の選び方や調味料が生まれる工程など、料理以前の段階の話が多かったです。最初は『思ってたのと違う』という感じだったのですが、聞いているうちにすごく面白くなってきて。さらに、その先生の言葉で、めちゃくちゃ心に刺さったことがあったんです」


あなたたちは芸大に来て、人の心に残すために作品をつくっていると思うけれど、
料理は消えることによって人の心に残る、いちばん儚い芸術なんですよ。


そんな先生の言葉に、可菜さんは雷にうたれたような衝撃を受けたといいます。

「この言葉を聞いて、本当に感動して。これだ、私はこれがやりたい! と思いました」


自分だけの表現の形を見つけるために

とはいえ、芸術大学から料理の道へ進むのは珍しいイメージがあります。
そのあたりの迷いや不安はなかったのですか? と、聞いてみました。

「じつは、大学のときはすごくコンプレックスを抱えていたんです。周りに才能豊かな人がいるなかで、何をやってもパッとしない……みたいなところがあって。何か自分にしかできないことを身に着けたいという思いをずっと持っていました。その何かが、私にとっては料理という形で付いてきてくれるんじゃないかって思えたから、今思えば『逃してたまるか!』という思いにも近かったのかも」

自分にしかできないことを模索していたなかでの、料理との出会い。
可菜さんにとって、自分だけの表現を形にしていくための、糸口のようにも感じられたのかもしれません。

「もちろん迷いもありましたよ。やりたいと思い始めたときには、『どう思いますか?』って、いろいろな人に相談しました。でも、全員が大賛成してくれたんです。周囲からの応援にも、背中を押されました」

そして21歳のとき、可菜さんは料理の道へ進むことを決意します。
その後は大学に通いながら京都の中華料理店でアルバイトをし、卒業後は東京にあるお店へと就職しました。


でも、どうして中華料理だったのでしょう?

「なんとなく、専門的な料理を学んでみたいという思いがあったんです。だけど、和食やお寿司は“昔ながらの男社会”っていうイメージがあってちょっと入りづらそう、と思ったり。フレンチやイタリアンはあまり馴染みがなく、自分が作っているところが想像できなくて。中華は、身近な感じがするけれど意外と知らなかったし、やっている人もあまりいなさそうだし、アリかもしれない、と。あとは、アルバイト先のお店が、当時住んでいた家と学校からとにかく近かったからです(笑)」

ゆるっと、しなやかに。飄々としているようで、スッと芯が通っている。
数あるジャンルのなかから中華を選んだエピソードからも、そんな可菜さんの人となりをうかがうことができるようです。


フラットに楽しめる、自由な中華料理を届けたい

大学卒業後すぐに入った東京のお店で働いてから、その後別の中華料理店でも修行を積み、可菜さんは現在のスタイルへとつながる独自の価値観を育んでいきました。

続けるうちに、それまで知らなかった中華料理の魅力にも気付かされたのだとか。

「足を踏み入れて、間近で見てみると、炒め方だったり、ずらっと並んだ調味料を手早く入れるところがかっこよくて。でもこれは東京のお店に就職してからわかったことなんですけど、中華料理が早くできるのは、仕込みに手をかけているからなんですよね。そういう、クイックさの裏でじつはていねいに作っているみたいなギャップもいいなって」

その気付きは、現在の可菜さんが大切にする「ていねいに作られたものを食べてほしい」というポリシーにもつながっているように思います。


一方で、修行時代にはもどかしさを感じることもあったようです。

「中華をやっていると言うと、まず『何料理?』と聞かれることがほどんどなんです。確かに中華料理には、四川、広東、山東……など、ジャンルごとに特徴があります。でも、私としてはそこまで凝り固まらずに、もっとフラットに楽しめる、自由な中華料理があってもいいのになって」

そんな思いを胸に、可菜さんは自分の思い描く料理を届けようと、『中華可菜』としてケータリングの活動をスタートされました。

それまでは、あくまでもお店の一員として働いてきた可菜さんですが、ケータリングを始めたことをきっかけに、自分のアイディアをのびのびと形にできるようになっていったそう。

「やっぱり、自分がやりたいことをやるには、自分でやるしかないなって。”中華可菜”という名前には、“中華かな?”という、もしかしたら中華じゃないかも……? というラフな意味も込めているんです」

そう笑う可菜さんの言葉から、やっぱり元来クリエイター気質の持ち主なんだろうな、と再認識させられました。
きっと可菜さんにとって、料理を作ることは、自分の思いやアイデアを表現することなのでしょう。


中華可菜飯店誕生。自由であることが何よりも楽しい

しかし、2020年には新型コロナウイルスの拡大がありました。
可菜さんのケータリングも影響を受け、お仕事を続けることが難しくなってしまったそうです。

そこで可菜さんは思い切って、自分のお店を持つことを決意します。

「もう一度どこかのお店に入って学ぶことも考えたけれど、やっぱりケータリングで自由にやらせてもらえたのが何よりも楽しくて。店を開くのももちろんリスクは大きいけれど、思い切ってやってみようかな、と。もともと、いつかはお店かアトリエを持てたらいいなと思っていたんです。道を絶たれたからこそ、自分がいちばんやりたいことにチャレンジして、後悔しないように生きたいって思えました」

そして2021年7月、東京・永福町に念願のお店『中華可菜飯店』をオープンされました。


中華可菜飯店のコンセプトは、「ヘルシーで健全な中華料理を味わってもらう」こと。

「中華料理って、どうしても“重たい”イメージがあると思うんです。だから私の場合は、毎日食べても疲れないような料理を目指しています。健全な料理とは、私のなかでは“ていねいに作ったもの”。きちんと下ごしらえに手間をかけて、余計な油をとったりすることで、重たくならずに、それでいて満足感の高い料理を食べてもらいたいと思っています」

オープン前はかなり不安も大きかったそう。
それでも、「お店を立ち上げて本当によかった」と、可菜さん。

「ふとしたときに自分が『おいしい』と感じたものを、『お店に置きたい』と考えることがあったりして。自分の店だから自由にできる! って、すごくうれしいです」

自分のお店を持つことは、その分責任や苦労も重くのしかかってくるはず。
それでも可菜さんは、自由に、のびのびとできる今の環境が何よりも楽しいのだそうです。


肩の力を抜いて楽しめる、日常の中華料理を

可菜さんは、お店で提供するお茶にもこだわりを持たれています。

「中華料理屋さんで出されるお茶って、そこそこきちんとしたお店でもあまりこだわられていないところが結構あるんです。一方で、数万円のコース料理を提供するような高級店では、やっぱりお茶もおいしい。香りも味もぜんぜん違っていて、料理を引き立ててくれるような存在なんですよね。でも、おいしい中国茶ってすごく高価なイメージがあって、『無理なくお店で飲んでもらえるような価格帯のもので、おいしいお茶ってどこから買ったらいいんだろう?』と思っていました。そんなとき、偶然参加したイベントをきっかけにHaaのお茶を知りました。お茶に対して『これでいいや』のお店が多いなかで、ここまでお茶にこだわっているブランドに出会えて、ぜひお願いしたいなって」

何事も、中途半端にしたり「これでいいや」で済ませるのが許せないという可菜さん。
そんな彼女の信念とHaaのこだわりが共鳴し、少しずつ新しい広がりも始まっています。

中華可菜飯店でHaaのお茶を使ったデザートが出されることになったり、今後は一緒にお茶会を開催したいな、などいろいろなコラボレーションが生まれているところです。


「以前、上海に行ったときに、昔からあるお茶屋さんでおばあちゃんが大きな茶盤を構えていて。そこにふらりと現れた常連さんが、スッと座って、あまりにもナチュラルにお茶会が始まったんです。その後もずっとおしゃべりをしていて、日常に、お茶を介したコミュニケーションが溶け込んでいることが、すごく素敵だなと思いました」

中華料理も、中国茶も。日常のなかで、肩の力を抜いて楽しんでほしい。
お話を聞いていて、可菜さんとHaaの思いはリンクするところがたくさんあるように感じます。

最後に、今後の目標を可菜さんに話してもらいました。

「中華料理って、バリバリの本格中華か町中華か……っていう二極化がされていると思うんです。でも私はそのどちらでもない、楽しい中華料理を作れたら。肩の力を抜いて楽しめる、おしゃれな中華料理屋になりたいです。あとは、一旦“お店を出す”っていう目標は達成できたので、今度は本を出してみたい! お店以外の場所や方法でも、ていねいで気楽な中華料理を広める活動をしていけたらうれしいです」








< Profile >

五十嵐可菜|Kana Igarashi

北海道出身。大学時代、恩師の「料理はいちばん儚い芸術」という言葉に心打たれ、料理の道へ。数年間にわたり中華料理店で修行後、ケータリング活動を経て2021年に中華可菜飯店をオープン。「健全でヘルシーな中国料理」を届けることをモットーに、肩の力を抜いて楽しめる中華料理を提供する。


Instagram: @kanaigarashi_




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中華可菜飯店|Chukakana Hanten


168-0064 東京都杉並区永福2-50-1
Tel: 080-7297-8010 ※完全予約制 
Open: 18:00-22:00
季節のおまかせ料理 ¥5,500


Instagram: @chukakana_hanten


Photo: Rintaro Kanemoto
Edit&Writing: Kyoka Sasanuma